大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和46年(オ)690号 判決 1971年12月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石川惇三の上告理由について。

原判決の認定したところによれば、上告人の被用者である河崎信雄は、勤務終了後に、私用に赴くため上告人所有の本件第一種原動機付自転車(事故車)を勝手に運転して、本件事故を起こしたものであるが、河崎は自動車助手として上告人に雇われ、平素貨物自動車に乗つて荷物の積み卸しに従事していたほか、上告会社社長から急用の際には事故車を運転使用してもよいとの許諾を得、かつ、事故車の鍵の所在をも教えられていて、三日に一度位の割合で、随時鍵を自由に取り出して事故車を上告人の業務のために運転していたのであり、本件事故当時も、自由に鍵を持ち出せる状況のもとにこれを用い、上告人の自転車置場に置いてあつた事故車を運転したというのであつて、この事実の認定は、挙示の証拠に照らして肯認することができる。そして、原判決認定の事実関係のもとにおいては、本件事故当時の河崎の事故車の運転は外形上その職務の範囲内の行為と認められ、したがつて、本件事故による損害は上告人の事業の執行につき生じたものであるとして、上告人の使用者責任を認めた原判決の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例